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創造性をはぐくむには/エリザベス・ギルバート




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創造性をはぐくむには

講演者:Elizabeth Gilbert(エリザベス・ギルバート)

人々が芸術家や天才に抱く無理な期待を巡ってエリザベス・ギルバートが考察します。そして、わずかばかりの一個人がジーニアス(天才)「である」のではなく、人間はみなジーニアスを「持っている」のだという急進的な考えを語ります。これは私的であり、可笑しいながらも、驚くほど感動的な講演です。

Elizabeth Gilbert: エリザベス・ギルバート "創造性をはぐくむには" | TED Talk

芸術=苦悩

クリエイティブ業界が他と違うのは、精神を気遣われることだ。例えば技術者のような他の職業ではあまりない。全クリエイティブ業界は、精神不安定で知られており、無残な死者の数を見ても明らかだ。20世紀だけで偉大な創作者たちがどれだけ早世し自殺しているか、実際の自殺でなく自分の才能に殺された人もいる。ライフワークに対し尋常ではない考え方だが誰も驚かない。創造に苦悩はつきものであり、芸術性は必ず最終的に苦痛をもたらすという話は、長年聞き慣れたものなので当然のことと捉えられている。

芸術家を守るために

この考え方は、次世紀に残すべきではない忌まわしい上に危険な発想だ。この暗い前提を受け入れずに好きな仕事を続けるにはどうすればいだろうか。それは、心理的に守れるものを作ること、つまり作者としての自分と未来の作品の評価を心配する自分の間に安全な距離を保てるようになることだ。

古代の考え方

古代のギリシャとローマでは、人間に創造性が備わっているとは信じられていなかった。創造性は人に付き添う精霊で遠く未知のところから来たのだと考えられていた。古代ギリシャ人は、精霊を"ダイモン"と呼び、ローマ人は肉体のない創造の霊を"ジーニアス" と呼んだ。彼らは"ジーニアス(天才)"を能力の秀でた個人とは考えず、精霊のことだと考えていた。

 

この考え方は作者と作品の評価に"距離"が存在する。古代のアーティストは、過剰な自惚れや失敗から守られていた。どんなに立派な作品でも自分だけの功績ではないし、失敗しても自分だけのせいではない。"ジーニアス"のおかげであり、せいでもある。

ルネッサンスの到来

この考えは長らく西洋に浸透していたがルネッサンスが全てを変えた。世界の中心に、全ての神と神秘の上に人間を置こうではないかというとてつもない考えが現れた。神の言葉を伝える謎の生き物は消え、合理的人文主義が誕生した。創造性は個人の内から現れるのだと人々は信じ始め、史上初めて芸術家が"ジーニアス"と呼ばれるようになった。そしてたった一人の人間を神聖で創造的な謎の本質で源だと信じさせるのは、繊細な人間の心とって重荷となった。それが作品への過剰な期待を作り、その期待へのプレッシャーが過去500年、芸術家たちを殺してきた。

考え方を変える

問題は今後、創造性の謎と上手に付き合うにはどうすればいいだろうかということ。昔の考え方にならうのは恐らく無理だろう。500年に及ぶ合理的人文思想を消すことはできない。

 

非凡な詩人のルース・ストーンやミュージシャンのトム・ウェイツの考え方が参考になる。彼らは、自分のアイデア、詩や曲を外部からやってくるものと捉える。北アフリカの似た具体例をあげる。

 

北アフリカの砂漠では月夜に踊りと歌の祭典があった。プロの踊り手が、ごくまれに一線を越えることがある。まるで時が止まり、踊り手がある境界を抜ける。いつもの踊りと変わらないはずなのにすべてが符合し、突然人間には見えなくなる。内から足元から輝き神々しく燃え上がる。当時の人々はそんな時、何が起きたか察し両手を合わせて"アラー、アラー、神よ、神よ"と唱え始める。ムーア人は南スペイン侵攻時、その慣習も持ち込み、長年かけて発音も変わり"アラー、アラー"から"オレー、オレー"へ。今でも闘牛とフラメンコで耳にする。

 

もし初めから非凡な才能が自分に備わっていたと信じなければ、その力が借り物だと思い、謎の源から人生に添えられ、終えたら他へ行くものと思えば全て変わる。奇妙で一風変わった共同作業、自分と変わった外部のモノとの対話と考え、身体から"ジーニアス"を出してしまえば不安は消える。のまれそうになった時に恐れず、ひるまず、結果を気にせず、"ジーニアス"がやって来ようが来まいが、やることをやり続けることが重要。

感想

ジーニアスの元々の意味やルネサンスの話が良かった。ルネサンスについては、「ルネサンス=人文主義」くらいのざっくりした知識しかなかったのでここまで激的に人の考え方を変えたと知って面白かった。

 

芸術家に顕著な話だけど、そうではない人にとっても大事な考え方だと思う。真面目で一生懸命な人ほど自分のせいだと考えて精神的にやられることが多いので、原因を外部にもっていって逃げ道を作るのは大事。自分がうまくいかない原因を周りのせいにしすぎると問題だけど、そういう人は精神が病まないように自己防衛してるのだろう。病むよりは病まない方が当然良いので、まあしょうがない。