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獣医が知っていて医師が知らないこと/バ-バラ・ナッタ-ソン・ホロウィッツ




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獣医が知っていて医師が知らないこと

講演者:Barbara Natterson-Horowitz(バ-バラ・ナッタ-ソン・ホロウィッツ)

たった一種類の動物しか診ない獣医を何と呼ぶでしょうか?それは医師です。魅力的なトークの中で、バーバラ・ナッターソン・ホロウィッツは、健康に対する種を跨ったアプローチがどのようにして人間という動物の医療―殊に心の健康―を改善出来るかを語っています。

バ-バラ・ナッタ-ソン・ホロウィッツ: 獣医が知っていて医師が知らないこと | TED Talk

動物と人間の病気の共通点

動物と人間の病気には大いに共通部分がある。うっ血性心不全、脳腫瘍、白血病、糖尿病、関節炎、ALS、乳癌、さらに精神疾患としてうつや不安、強迫症、摂食障害、自傷行為など。しかし、医師は人間の患者の病気について獣医に意見を求めたり、獣医学の文献を調べたり、獣医のカンファレンスに出席することはない。

 

理由として考えられるのは、

・今日の病院で治療を受けている人間の患者と海や農場、ジャングルで住んでいる動物の患者との間にある心理的な距離

・また医師や科学者が、理屈の上では自分たち、ホモサピエンスは単なる一つの種であるとしながらも、気持ちの上では人間が特別だという考え。

というものだ。

動物として患者を診る

ヒトという動物として患者を見れば、もっと上手く人間の患者も診られるかもしれないと考えるきっかけとなったいくつかの事例がある。

心不全

2000年頃、人間の循環器科医は感情が原因で心不全を引き起こすと「発見」した。しかしこの「新しい」人間の診断は、新しいものでも人間に特有のものでもなかった。1970年代以来、獣医は猿からフラミンゴ、鹿から兎に至るまでの動物に対し感情によって引き起こされた症状を診断し治療し予防すらしていた。

自傷行為

人間の患者で自分の髪の一部分を引き抜く人たちや実際自分の体に傷をつける人たちもいる。動物の患者も又自分を傷つける事がある。羽を自分でむしり取る鳥や血が出るまで自分の脇腹を噛む種馬。しかし獣医は自傷行為をする動物に対して、とても特殊且つ効果的な方法で治療や予防を行う。

産後うつや産後の精神病

産後うつや産後の精神病は 時折産後すぐ 現れることがある。そして 時には深刻なうつや精神病にさえなってしまう。彼女たちは自分の生まれたばかりの赤ん坊を無視し、極端なケースだと子どもを傷つける事もある。馬専門の獣医は時として雌馬が産後すぐに子馬を無視し、授乳を拒否する事を知っている。また雌馬が子馬を蹴って、死に至らせる例もあるという。しかし、雌馬が子馬に授乳拒否をするのは、雌馬の血中オキシトシンの増加と関わりのある病的現象が介入していると獣医は気づいた。オキシトシンは絆を形成するホルモンで、これによって雌馬は子馬に対しより興味を強める。

獣医と医師の隔たり

このように獣医と医師の知識は共有するのが好ましいが、両者の隔たりは残念ながら大きいままだ。

 

原因の1つは医師のプライド。メディカルドクターでないドクターに対し医師の中には下に見る者もいる。もちろん殆どの医師は、最近では医科大学に入るよりも獣医学部に入る方が難しい事を知らない。医科大学に入ると、一つの種、ホモサピエンスを知る事が全てだが、獣医は哺乳類、両生類、爬虫類、魚、鳥の健康や病気について知る必要がある。医師の恩着せがましさや無知に獣医が苛立つのは無理からぬ事だ。次のような獣医の言葉がある。

 

「一つの種しか診ることの出来ない獣医を何と呼ぶでしょう?医師です。」

講演者の取り組み

医科大学と獣医学部とを一緒にした共同デイスカッションによる動物と人間の患者の病気や障害の共有などを通して医師と獣医のギャップを埋めようとしており、医師が人間の患者をケア出来る最良の方法の一つは、この惑星に住む人間以外の全ての患者に対してどのように生き、成長し、病気になり癒すかに深い注意を向けることによると考えている。

感想

結構簡単に思いつきそうなことだけど、なかなかそういうわけでもないようだ。特に心不全の原因の発見に人間と動物で約30年も開きがあるのには驚いた。本当に医師と獣医では関わりがなかったんだろう。

 

動物から人間の治療のヒントを得るということはわかったし、有益だとも思う。でも、人間と動物の病気に多くの共通点があるなら、病気の解明という点でも結局同じところで行き詰まってしまうような気がする。